プログラマSEがIT業界のカースト制度から抜け出す一番の方法
「元請けと下請けの階層もあるし…」
システムの受託開発ってよく建設業のゼネコン構造に例えられています。
建設業の場合、例えば公共事業のような大型案件は、
国の機関
↓
清水建設のような大手ゼネコン
↓
中堅下請け企業
↓
零細下請け企業
↓
さらなる下請け…へと続く
下請けに仕事を流す過程でマージン(手数料)が抜かれます。
国から大手ゼネコンが10億円で請けた仕事を中堅下請け企業に発注する際には8億円で流せば、何もせずに2億円の利益が出ます。
これが、下請けに仕事を流す度に起きて、最終的に仕事をする最下層の下請け企業には少ない金額しか支払われないのです。
何も仕事をせず、下請けに仕事を流すだけの大手企業のみが潤い、末端の下請け企業の社員は薄給で重労働しています。
まるでインドのカースト制度のようです。バラモン(宗教家)とクシャトリア(貴族)が潤うために平民と奴隷が働かされている、現代にも残る奴隷制度です。
奴隷なんて、歴史や他国の話だと思っていたら、わが国日本の産業構造もこれとそっくりだったわけです。
IT業界の受託開発にも同じことがあります。
そんなわけで今回はIT業界におけるカースト制度の解説と、そこから抜け出す方法を考えてみます。
Contents
受託開発の階層構造
業務システムの受託開発には、以下のようなヒエラルキーがあります。
公共事業の例でいえば、
総務省がマイナンバーシステムの開発を大手ITベンダーに1000億円で発注
↓
NTTデータ、富士通、日立、NECなどの大手ベンダーが受注し下請けの準大手ベンダーに500億円マージンを引いて、残りの500億円で下請けに発注
↓
TIS、富士ソフト、大塚商会などの準大手ベンダーが受注し、200億円マージンを引いて、300億円で下請けに発注
↓
複数の中堅ベンダーが受注し、100億円マージンを引いて、200億円で下請けに流す
↓
複数の零細ベンダーが受注し、仕事をする
ってな感じです。階層が上に行けば行くほど、大きなマージンをとれます。上階層の企業も、何も仕事をしていないわけではなく、発注先を決めたり、発注した先がきちんと仕事をするかの進捗管理などをしますので、まったくのボロ儲けというわけではありませんが、上階層の企業の方が少ない労力で大きな利益を得ていることは間違いありません。
さて、このようなカースト制度がある世界でどんな生き方をすればいいでしょうか?
少し視点を変えて考えてみましょう。
IT業界のカースト制度ではなく、インドのカースト制度を考えてみると答えが見えてきます。
インドで奴隷を助けようとしたら怒られる?
認知科学者の苫米地英人さんは世界から戦争と差別をなくす活動をされていて、インドに行った際に奴隷層の人に
「あなたの生活をよくするための支援をさせてください!」
と言ったら、
「そんなことをされたら困る、私は今世で奴隷として生きることで来世は報われるのだから、生活が良くなったらカルマが浄化されないじゃないか!!?」
と怒られたそうです。
「今世?来世?カルマ?はぁ?何言ってんだ、この人は?」
と日本人なら思いますが、インド人はカースト制度やヒンドゥー教の世界観を完全に信じていて、「この人生で奴隷としての苦痛を味わえば、生まれ変わった来世で幸せになれる」と本気で信じているのです。
来世なんて、あるかないかも分からないものに掛けるなんてどうかしてると思いますが、インドで生まれ育ったら、こう考えるのも無理はないのかもしれません。
バラモンやクシャトリアが利益を得るために、このような洗脳が徹底的にされているということです。
さて、私たち日本人から見て、奴隷の人たちはどうすればいいと思いますか?
奴隷をやめればいいですよね。外国で暮らすための努力をするとか、制度上はカースト制度は消滅したことになっているのですから、やりようはあるはずです。
しかし、やめられないんです。奴隷として生きたら、カルマが浄化されて来世で幸せになれると信じ切っているからです。
つまり、カースト制度というシステムの中にいると解決策が見えないんです。システムの外にいる私たちには、かんたんにわかる解決策が中にいる人にはわからないのです。
これを応用して考えるとIT業界の階層構造から抜け出す方法が見えてきます。
そうです。システムの外側に出ればいいんです!
階層構造の外側に行く方法
例えば、SIerから自社製品・サービスの会社に転職するのもその一つです。
自社製品・サービスの会社とは、
- Webサービス
- スマホアプリ
- ゲーム
- ソフトウェア製品
の開発・運営・販売をするビジネスをしている会社のことです。
代表的な企業は、
- Webサービス → Google, Yahoo, Amazon, 楽天, Facebook, ツイッター, サイバーエージェント, ドワンゴ, クックパッド等
- スマホアプリ → LINE, インスタグラム, メルカリ, スマートニュース等
- ゲーム → ガンホー, mixi, コロプラ, バンダイナムコ, スクウェア・エニックス等
- ソフトウェア製品 → マイクロソフト, オラクル, ジャストシステム, ソースネクスト等
です。
受託開発には、元請け・下請けの階層がありますが、自社製品・サービスを開発してる会社には、そのような構造はありません。
それに仕事もおもしろそうですよね!
階層の外に出ると見えてくること
SIerにいたころの私はスキルアップして上の階層の会社に転職することを目標にしていました。
専門学校を卒業して零細ITベンダーに就職後、4年半働いて、準大手SIerに転職しました。一つ階層を上がることができたのです。
しかし、仕事は楽しくありませんでした。元請け企業の下請け仕事だからです。主体性がない仕事はつまらないものです。
そこで一念発起してスマホゲームエンジニアに転身しました。
やりたい仕事をやると、真摯な仲間と出会える
SIerではプログラマーよりSE、SEよりPMが偉いというヒエラルキーがありましたが、スマホゲーム開発の職場は、上下関係ではなく、横の関係だったんです。
自社サービス開発にも、
- エンジニア
- デザイナー
- プランナー、ディレクター、プロデューサー
- 運営
と様々な仕事がありますが、そこに上下関係はありません。プロデューサーやディレクターが偉いわけでもなく対等だったんです。
ある日、プロデューサーが私のデスクにきて、
「この機能なんですが、こういう仕様に変えたいんです。今頃言って申し訳ないのですが、対応可能ですか?」
と相談に来ました。これが上下関係であれば、
「こういう仕様に変えたので対応して下さい」
と言われたはずです。
職種の違いは職階の違いではなく、役割の違いなんです。
そういった職場では、それぞれ違いの職種=役割を尊敬し尊重し合っています。
私もエンジニアとして、プロデューサーやプランナーの方たちの仕事を尊敬しています。自分では思いつかないような面白いアイデア・仕様を提案されるからです。
そして、皆それぞれ、自分の役割を果たそうと真摯に仕事に取り組んでいました。
自分にとっていちばん大切なことは?
思えば、SIerにいた頃の私は、
- いかに楽してお金を稼ぐか?
- もっと待遇のいい会社に転職したい!
そんなことばかり考えていたように思います。そうして選んだ会社には私と同じように打算的な考えを持った人たちがたくさんいたのだと思います。
その結果、責任のなすりつけ合いや仕事への消極性が生まれます。そんな職場は楽しくありません。
結局のところ何を大切にするかなんです。
「楽してお金を稼げるか?」を目指したってそんな都合のよい職場はありません。仮にそんな職場が合ったとしても、もっと楽にたくさん稼ぎたいと思うだけで際限がありません。
そうではなく、自分が
- やりたい仕事
- やるべき仕事
- やる意義がある仕事
をやることが答えなんです。それ以外システムの外側に出る方法はありません。
それは決して難しいことではありません。業務システム開発とWebサービス開発やゲームのサーバーサイドで使う技術の多くは同じですし、プログラミングの基本は変わりません。
自分がやりたい仕事を見つけて、そこに向かって踏み出せば、きっとたどり着けると思います。