就職や転職は、給料の高さや待遇よりも、やる意義のある仕事を求めよ
10年かかって辿り着いた結論をはじめに書きます。
就職や転職は、給料の高さや待遇よりも、やる意義のある仕事ができるかで決めるべきです。
給料や待遇は会社の業績によって変わります。待遇の良さで選ぶと待遇が悪くなった途端、その会社で働くのが苦痛になってしまいます。それに、貴重な生命時間を「待遇がいいだけの仕事」に費やすのはもったいないことです。だからこそ、自分がやる意義のある仕事ができるかで決めるべきです。やる意義のある仕事であれば、たとえ会社の業績が落ちて給料が下がっても、その仕事をやる意義は変わらないですからね。
しかし、それは今わかったことであり、当時の私は自分のスキルを高め、より待遇の良い会社に転職していけば幸せになれると信じていました。しかし、それはもろくも打ち砕かれました。
そんな私の転職経験を振り返り、アンチパターンとして紹介します。
Contents
最初の転職理由は給料が安かったから(3年目で320万円)
私は高校卒業後、専門学校に2年間通って卒業後、従業員80人くらいの会社に入りました。受託開発の会社です。就職活動をして5社ほど応募して最初に内定が出た会社に就職しました。当時の自分は「就職できればどの会社でもいいや」と思っていました。
この会社は特に悪い会社でもなかったのですが、良い会社でもありませんでした。
給料はITエンジニアとしてはかなり低い会社だったと思います。入社3年目の年収が320万円でしたので、覚えてませんが、おそらく1年目は300万円以下だったのではないかと思います。当時、その会社の先輩に給料の低さのことを尋ねたら「どこもそんなもんだよ、たいして変わらないよ」と言われました。「そんなもんかなぁ?」と思いつつも、「んなわけないだろう!」と思って転職することにしました。給料以外にも社内に技術レベルが高い人がいなくて勉強にならなかったというのもありましたけどね。
どうせ転職するんだったら、すこし間を空けて長期の休みを取ろうということで、会社を辞めてしばらく転職活動もしませんでした。とはいえ、月に一回以上の転職活動実績がないと失業保険がもらえないので、月に一社くらいのゆるいペースで面接を受けたりしていました。
そんなまったりした日々の中、当時実家に住んでいたので、いつまでも仕事をせずに家にいるのも居心地が悪くなってきたので、3か月くらいして転職活動を開始しました。当時の自分は休みがあっても特にやることがなく、TVを見てダラダラしているだけだったので、今となってはもったいない過ごし方をしたものだと思っています。
ITエンジニアの転職はとてもかんたんで、転職エージェントに登録して、自分の希望をエージェントに伝えたら、担当者が私に合った会社を見繕って紹介してくれました。紹介された会社の中から応募したい会社を選ぶと、エージェントがその会社に私の職務経歴書を送ってくれて、書類選考に通ったら、面接日の設定をしてくれます。なので、とてもかんたんでした。
エージェントはITエンジニアの転職情報に詳しいので市場動向などを教えてくれて、どのようなキャリアを形成していけばいいかをアドバイスしてくれました。その時に言われたのは
「プログラミングだけやってるようでは年収はあまり高くならないので、上流工程やマネージメントを経験できる会社に入社した方がいい」
というものでした。上流工程やマネージメントには興味はありませんでしたが、市場動向に詳しい人の意見だから従った方がいいかなと思って、そのような経験ができそうな会社を紹介してもらいました。
このアドバイス自体は間違っていないのですが、問題は私が、他人任せで自分の人生を決めていたことです。自分の人生は全て自分の意志で決めるべきです。自分の人生なのですから。
当時はそういう発想がなかったのでエージェントに勧められるがままに応募をしていきました。20社くらい応募する半分くらいが書類選考を通って10社になり、1時面接でさらに半分の5社になり、最終的に2社から内定をもらいました。
2社の内、規模が大きい方の会社に入社することにしました。今思えば、これは昔から母が常々言い続けていた「大きい会社に入った方が将来安泰だ」という言葉による影響だと思います。これまた、自分の意志ではなく母の意志によって自分の人生を選択してしまっていたのです。
大企業でも社員のレベルは低い?
ということで2社目の会社にはいりました。この会社も受託開発が主要事業の会社でした。とはいえ、東証一部上場企業なので、
「これで俺も大企業の社員だ!」
と誇らしい気持ちを感じました。
大企業だから、きっと社員のレベルも高くて勉強になるんだろうなと期待していたのですが、その期待は大きく裏切られることになりました。
一言で言うと前の会社と大して変わらないレベルでした。
結局の所、人によってスキルレベルは大きく違っていて、どの会社にも優れた人はいるし、ダメな人もいるということなのでしょう。
小規模の会社であれば全員優れたエンジニアである可能性はありますが、大企業で従業員が数千人いて、その数千人が全員優れてるはずもないですからね。
大企業なのにリーマンショックで年収が70万円もダウン?
この会社に入って数年は順調に給料が上がっていきました。転職して
- 1年目で年収が420万円
- 2年目に459万円
- 3年目で500万円を突破
- 4年目で550万円
と順調に上がっていきましたが、5年目で480万円に下がりました。年収が70万円ダウンです!!
原因はリーマンショックです。
リーマンショックで受託開発の受注が大幅に減って仕事のない社員を多く抱える状況となりました。私は当時担当していたクライアント企業から良い評価を得ていたので仕事がなくなることはありませんでした。自分は同じ仕事をしていて、同じだけ会社に利益をもたらしているのに年収が70万円も下がってしまったのは割に合わないと思いました。同じプロジェクトにいる他社の人に聞いてみたら、
「うちの会社はそんなひどいことにはなってないよ、年収も下がってないし」
と言われました。その人の会社は大手メーカーの子会社IT企業でした。2ちゃんねるでいうところのメー子ってやつです。
2ちゃんねるの就職板・転職板は意外と正しい?
今まで2ちゃんねるの就職板・転職板の存在は知らず見ていなかったのですが、ちょうどこのころ存在を知り見るようになっていました。
自分の会社について書かれてる板を見てみたら、ボロクソに書かれていました。
しかし、内容自体は多少煽る書き方をしてるけれど、事実でした。
- 大手だけど技術力もないし、営業力もない。
- 独立系でバックボーンが安定してない弱小企業。
と書かれていましたが、これは紛れもない事実でした。
親が勧める企業には入るべきではない本当の理由
母がずっと言い続けていた「大企業に入れば一生安泰だから、大きな会社に入りなさい」は間違いだったのです。
もちろん、当時も本やWebサイトなどには、「これからの時代は大企業であれ安泰ではなくどこでも働けるスキルを持つべきだ」みたいな話は書かれていました。
内容としては知っていたけれど、自分が東証一部上場企業社員になって、年収が70万円下がるという実体験をすることによってはじめて実感を持って理解することができました。
親が勧める企業は、ピークを過ぎた企業であり衰退していく企業だっていう話もあります。まぁ、そうなんだろうなとは思っていましたが、実体験が伴うと確信をもって言うことができます。
「親が勧める会社に入るべきではない!」と。
ピークを過ぎた企業だからというだけではありません。未来への選択眼を持った親であったとしても、「親が勧める会社に入るべきではない」と私は思います。
なぜならば、「自分の人生は自分で選択すべきであり、入る会社は自分で決めるべきだから」です!
これ以上年収を下げないための転職
年収が70万円も下がり、慌てて転職エージェントに相談したら、採用時の年収は前職の年収をベースに計算される可能性が高いので、今年の年収が去年よりも下がりそうならば今年中に転職した方がいいと言われました。
リーマンショック後の景気はまだ回復しておらず去年よりも年収が下がりそうだったので、じゃあ今年中に転職先を決めようと考えました。
前回同様20社くらい応募して書類選考で半分、1次面接で半分、2時面接で半分通過して結局前回同様2社から内定をもらいました。
内定をもらえたのは、
- 設立10年未満の受託開発系ベンチャー
- 大手流通業グループのIT子会社
でした。
当時私が所属していた会社は一部上場の大手企業でも独立系企業だったので、不況時に年収が70万円も下がった、ならば、大手流通業グループのIT系子会社であれば、安定していて良い待遇を受けられるだろうと思い、こちらの会社に入ることにしました。
提示された年収はベンチャーの方が600万円で流通系子会社が550万円と少なかったのですが、当時の私は大企業信仰があったので、こちらを選びました。
当時2チャンネルの転職板をよく見ていた自分としては、「やっとこれで独立系からおさらばしてユー子(ユーザー子会社)に入ることができる!」と晴れ晴れした気持ちでいました。
大手流通業グループのIT系子会社なのに洗脳ブラック企業?
大手流通業グループのIT系子会社に入社した私は、ついに本当の大企業社員になれたと誇らしい気持ちでいました。
今までは受託開発の仕事でクライアント企業のオフィスで仕事をしていましたが、自社のWebサービスを開発する仕事だったので、勤務先も自社のオフィスでした。
「やっぱ、自社で働いた方が落ち着くわー」と悦に入っていたのですが、入社して数日で様子がおかしいことに気が付きました。
朝9時になると、全員起立して、社訓を暗唱し始めました。
「え?なんなの?カルト教団なの?」
みたいな雰囲気です。それだけならまだしも、週に一回社員全員がセミナールームに集められて社長が2時間くらい社員を怒鳴り散らしました。いい大人が青筋立てて顔真っ赤になって汚い言葉を社員に投げつけていました。これは本当に衝撃的でした。
- 経営者というものはここまで横暴なのか?
- 社員というものはここまで弱い立場なのだろうか?
といろいろと考えさせられました。
書籍ビジョナリカンパニーを悪用して社員を洗脳
この会社の社長はビジョナリーカンパニーという本を引用して、
「この本に書かれてるように社員が会社に対して狂信的に貢献するカルト集団のような企業を目指す!」
と言っていました。だから、
- 会社に対して貢献する思いの足りない人間は首にするので覚悟しろ!!!
- プライベートを犠牲にして会社に貢献しろ!!!
と言っていました。まったくあきれたものです(笑)
ビジョナリーカンパニーには、ディズニーなどの企業を紹介する章で「社員が会社を大好きでカルト集団のような強い結束力がある」みたいな表現がありましたが、それは、「社員が会社を大好きになった結果、そうなった」ことに意味があるのであって、「会社に対する思いが足りないやつは首にするぞ」と脅してカルト教団のようになっても、まったく意味が違います。それだと本当のカルト教団になってしまいますからね(笑)
23時より前に帰ることが許されない
ある日の朝多くの社員に社長からメールが来ました。内容は
「そんなに早く帰ってちゃんと仕事してんの?」
というものでした。その時私が帰ったのは22時半くらいでした。どうやら23時以前に帰った社員全員にそのようなメールを出したようです。あきれてものも言えませんが、他の社員を見ると、慌てて弁明のメールを返しているようです。私は返信をしませんでした。
上役たちは、そんなバカげたことをいう社長に何も言えませんでした。恐怖心を植え付けられて洗脳されているように見えました。
最新の脳科学でブラック企業による洗脳から自分を守れ!
私も危うく洗脳されてしまうところでしたが、そうならなかったのは、それらの光景を客観的に分析することができたからです。私は認知科学者 苫米地英人さんの本を読んでいたので洗脳のメカニズムを知っていたのです。
洗脳は、
- 恐怖心
- 快楽
を使って行われるそうです。この社長の場合、恐怖心を植え付けることによって社員を自分の意のままに操ろう、つまり、プライベート犠牲にして身を粉にして働く奴隷を作ろうとしていたのだと思います。
もちろん、この社長が洗脳技術を知っていたとは思えないので、おそらく無意識でそういうことをしていたのでしょう。無意識であれ意図的であれ恐怖心で社員を支配しようとするような会社にいるべきではありません。
当時の私は転職エージェントの言うことを鵜呑みにしていたので「転職回数が多かったり、在籍期間が短いと、次の転職が難しくなる」というのを信じていて、「入社してすぐ辞めるのはまずいなぁ、でもこんな洗脳ブラック企業にいるのは苦痛だし馬鹿馬鹿しいなぁ」と、すぐに退職すべきか決めかねていました。
ブラック企業の秩序を乱すと排除される!?
入社して2か月たった所で、部署移動を命じられました。
移動先の部署の部長はもっとも社長に洗脳されてるかなり変な人でした。やだなぁと思いつつも適当にあしらっていたら、ある時、部長に呼び出されました。
「おまえは、この会社に合ってないんじゃないか?辛そうに見えるぞ、まだ試用期間なんだし、辞めたいなら早く辞めた方がいいぞ。会社に合わせる気がないなら早く辞めてくれ!」
と言われたんです。
「なるほど、これがコンフォートゾーンか!」
と思いました。これは脳科学の理論で
「人にはコンフォートゾーンというその人にとっての居心地のいい空間・秩序があり、その秩序を維持しようとする無意識の働きがある」
というものです。
社長にむちゃくちゃ洗脳されている部長にとって入社して数か月経っても洗脳されない私が邪魔だったのでしょう。このまま私が居続けて他の社員も私のような洗脳されない人間になってしまったらこの洗脳ブラック企業の秩序が乱されてしまいます。それはまずいと無意識に感じて、私を排除しようとしたのだと考えられます。
ふつうの人なら、上司から「会社を辞めろ!」と急に言われたら、パニクってしまうところですが、私の場合、「これがコンフォートゾーンの実例だな!」と論理的思考が働いたので恐怖心でパニクることがありませんでした。
クライシスサイコロジーという災害に対処するための心理学では「恐怖を感じたら、論理的思考をすると、情動的反応が抑まって冷静さを取り戻せる」と考えられています。これ、とっても使えるので、恐怖心を感じたら、
- 怖くなった理由を考えてみる
- 状況を論理的に分析してみる
ことをおすすめします。
そんなわけで「上司の辞めろという提案は渡りに船だ」と思って、このブラック洗脳企業を辞めることにしました。入社して2か月半で辞めるスピード退職でした。
大手企業も意外とちっぽけな存在?
辞めた後、数か月して、このブラック企業から封筒が届きました。何だろうと思って見たら、
「最後の月の社員食堂の食事代を給料から引かずに振り込んでしまったのでその分を返してください」
というものでした。しばらく無視してたら、電話が掛かってきたので、仕方ないので振り込みました。最後の月は半月しか勤務してないので食事代はたったの数千円です。
大手企業って言ってもそんなもんなんだなということです。これでやっと私は大手企業は素晴らしいという盲信から抜け出すことができました。
仕事を始めてから10年かかりました。どうかこの記事を読んでる皆さんは盲目的に大企業を目指さないでください。
もちろん大企業の中に素晴らしい企業はたくさんあります。私が言いたいのは「大企業だからと言って全てが素晴らしい会社なわけではない」ということです。当たり前のことですよね。当たり前のことをほんとうの意味で理解するのは意外と難しいことなんじゃないかなと思います。
50歳の時にブラック洗脳企業にいたら嫌でもしがみ付かなきゃならない?
ブラック洗脳企業での体験は2か月半でしたが、衝撃的でした。
経営者の中にはあそこまで横暴で傲慢な人がいて、そういう人が会社のトップになったら、そこで働く社員は、なす術もなくこき使われて消耗してしまう…、奴隷であるかのように見えました。
私の場合、当時31歳だったので、就職先を見つけるのはかんたんなので良かったのですが、これが50歳とかだったら、嫌でもその会社にしがみつくしかないわけでそれって地獄ですよね。
実際、その会社で最初に私が配属された部署の部長は別のSIerから出向してきていたのですが、嫌でもやめられない状況なのだそうです。そのSIerはそのブラック企業のグループとは昔から大きな取引があり、その部長が出向先から無理やり抜けるようなことがあったら、取引を減らされたりといったリスクがあり辞めるに辞められないんだそうです。
ぞっとしますよね。ただ、それでも辞めるべきだと思います。私たちの貴重な生命時間は誰かに奴隷のようにこき使われるためにあるのではないからです。
飲み会で見えた部長の本音?
私が会社を辞めてから数週間後に、その部長の部下からメールが来ました。
「やまろうさんの送迎飲み会をやりたいので来てください」
とのことでした。
その部署の人たちは比較的洗脳されてない人たちで、私との関係も良かったのですが、まさか、わざわざ辞めた人間を飲み会に呼んでくれるなんていい人たちだなと思って参加しました。
お金も向こう持ちでした。「君の送迎会なんだから払わなくていいよ」と。こんなにやさしい人たちが傲慢社長にこき使われているのは悲しいことです。
その飲み会で、部長から「ぶっちゃけなんで辞めたの?」と聞かれて
「だって、あんなバカな人(社長)からバカな話を毎週2時間も聞かされるの嫌じゃないですか?」
と答えました。すると、部長の頭がガクンと大きく揺れたのです。部長にはチックのような症状があって時々頭がカクンと揺れることがありました。チックというのはビートたけしが肩を動かしたり、石原慎太郎が目をパチパチしたりするような身体の癖のことです。
この部長の場合、頭がカクンと揺れる癖があったのですが、その時は、一段と大きく頭が揺れました、かっくんと。そして部長はこう言いました。
「…だよな!」と、とびっきりの笑顔で。
たぶん、私からこのセリフを聞きたくて、飲み会に呼んだのでしょう。少しでも部長の気が晴れたならいいなと思います!
やる意義のある仕事をしよう!
これらの経験により、給料や会社の規模を求めるよりも、仕事のやりがい、その仕事を自分がやる意義を重視すべきだと考えるようになりました。その後はWebサービスやゲーム開発の仕事をしています。
やりがい・やる意義で会社を選んだら、不思議なもので、やりがいのある仕事ができるだけでなく、一緒に仕事をするメンバーにも恵まれてとても良い環境で仕事させてもらってます。
そこに集まっているメンバーもまた、給料や会社の規模ではなく、やる意義を求めて集まったからなんだと思います。
ですから、これを読んでくれたあなたにも、ぜひ、あなたがやる意義のある仕事をやっていただきたいと思うんです。今いる職場では「やる意義のある仕事ができない」のであれば、転職されることをおすすめします。その時にはくれぐれも私のように給料や会社の規模だけを求めるという間違いをしないでください。
ぜひ「あなたがやる意義のある仕事」を見つけてください!